041 長かった2年間 無事に卒業しましたが息子の心の傷は

 

あの日からの2年間は本当に長かった

2020年1月6日、始業式の当日に学校へ行かずに行方不明となり、警察が携帯電話会社に対して携帯電話位置情報の取得を行ったことでおおよその居場所が分かり、夜無事に保護。

1月9日にまた学校へ行かず、今度は最寄り駅のトイレ内に隠れているところを見つけて家に連れ戻した。

連れ戻してからなぜ学校へ行かないといった行為を行ったのかを聞き出し、そこで元同級生Aによるいじめと水泳部顧問の言動が原因であり、6日に手首を切って死のうとしていたことが発覚。

その後Aは退学処分となったが、Aを退学させないための水泳部顧問やクラス担任の言動があまりにひどく、何とか登校できていた息子は教師たちのいじめによって学校へ行けなくなってしまった。

いじめ被害者の息子のことより、水泳で良い成績を残す加害者Aの身のほうが心配だったようだ。

ただ同じクラスの水泳部員たちの心遣いによって少しずつ復帰できるようになり、2年生からは推薦入学のクラスから一般入学のクラスへ移ったことで徐々に安定するようにはなってきた。

しかし2年生になってからも、水泳部顧問が2学期の途中から体育の授業を担当するようになると息子は精神状態のバランスを崩してしまい、学校へ抗議して外してもらうなどの対策を取った。

 

3年生になるとスイミングスクールにもほとんど通うことがなくなり、5月に休会、そして11月に退会しました。

水泳の推薦入学で入ったものの、結局は水泳ではなく勉強を選びました。

これまでの小・中学校時代は水泳を中心にした生活で、同級生と遊ぶような時間は全く持てなかったけど、勉強側にシフトしたことでクラスメイトとの接点が多くなり、息子にしたらはじめて普通の高校生っぽい生活を送ることができたのかもしれないです。

 

ただし心の傷はいまだ全く癒えず、ちょっとした言葉に敏感に反応して激しく怒ったり、泣いたり、ふさぎ込む状態が続いています。

学校ではそういう顔を一切見せないので、学校の教師を含む多くの人は息子は治癒したのだと感じているかもしれませんが、学校で本当の顔を見せないぶん家では心の動揺がそのまま表れています。

学校では我慢しているのだと思いますが、でもクラスメイトとラーメンを食べに行ったりもする。

そして帰宅すると疲れ果てた顔と異常に機嫌が悪い息子が顔を出します。

 

でもとりあえずは卒業することができました。

私も妻もとにかく疲れ果てた2年間でした。

 

 

卒業式

明日はようやく卒業式だ。

そう思うと夜は全く寝付けず、私は息子が中学3年生の時に推薦入学を打診されてから大学の合格発表までのことが、走馬灯のように頭の中を駆け巡りました。

良いことはほとんどなく、悪いことや後悔ばかりが思い出されました。

 

でも私の中では同じように水泳で推薦入学した人たちと、少しでも関われたことは良かったのかなと思っています。

小学生の頃から息子よりはるかに速いタイムで泳いでいた人たちと、短い期間ではあったけど同じクラスメイトとして過ごせたのは本当に良かった。

もちろんそのことで息子の太郎には大きなプレッシャーが圧し掛かってきたのも事実ですが、それまでならば喋ることもできなかった人たちと同じ時間と空間を共有できたことは、大きな意味があるんじゃないかなと。

おそらく別のクラスになって2年間が経過したことで、もうすでに交流はないでしょう。

卒業にあたってせめて1枚の写真に収まってくれていたらとは思いますが、そんな願いも通じなかったのかもしれません。

 

妻は卒業式の朝、やっとこの高校との縁が切れると喜んでいました。

もう水泳部顧問のことを考えずに済むから。

しかし卒業式の会場へ入るために上履きに履き替えている時に、付けてきたパールのネックレスの糸が切れて真珠をまき散らしてしまいました。

縁起が悪いし、また息子に何か起こるのではないかと本当に不安になった私ですが

「これで完全に縁が切れるということを体現したんだ」

と妻が言い放っていました。

「家を出る時でもなく、電車に乗っている時でも駅から学校へ歩いている時でもない。学校へ入るときに切れたのだから、ネックレスがこの学校との縁を切ってくれたのかも」

 

卒業式は感染対策を考慮し声を出さないことを基本に行われたので、どうしても質素になってしまいます。

今のご時世で式を行えるだけでも上等なのですが。

 

この学校では式の際に卒業する人数だけではなく、入学者数と転学した人数や退学した人数を併せて読み上げます。

中高一貫組はこの慣例に従って、入学者数のあとに転学した人数と退学した人数を読み上げたのですが、高校入学組に関しては卒業する人数のみが読み上げられました。

一体どういった思惑があるのかはわかりません。

退学処分となった生徒がいる場合は読み上げないのかな。

でもこの式には退学処分となったAも、一切謝罪をしようともしないAの両親もいないはずなのに。

それとも息子の太郎への影響を考えて読み上げなかったのか。

 

式の簡素化ということで理事長の式辞のみとなり、学園長や校長の式辞はHP上で閲覧してほしいとのこと。

理事長の式辞には同校の水泳部顧問によるいじめと言うか、恫喝・脅迫・威圧なんて無かったかのような発言で、もう息子のことは眼中になんて無いということがはっきりと分かるものでした。

「皆さんこれからたくさんの間違いをされると思います。自らの非を認め、反省し、改善するということ。その素直さが大切だと思っています」

「最も大切なことは許し合う心、他を受け入れる寛容な心ではないかと思っています」

 

水泳部顧問は間違いを犯したものの、自分の非を認めず、反省もせず、何も改善もしない、まったく素直さなんてない。

自分は太郎に関することで何も処分されておらず、様々なうわさが出ているが自分は一切関係ないと、ある水泳部員の保護者に言ったことも耳に入っています。

許し合う心や他を受け入れる寛容な心はたしかに息子にはないが、同じように水泳部顧問にも寛容な心なんて全く無いではないか。

授業で息子を睨みつけるようなことをする教師を、なぜ息子が許せると言えるのか。

もちろん理事長の言葉は息子に対してのみ放たれた言葉ではないが、この学校の教師によって心をボロボロにされた生徒もこの卒業式に参加していることなんて全く頭にない。

やっぱり形だけの謝罪(言い訳)面談だけですべてが片付いたと思っているのでしょう。

やっぱり〝浅はか〟でした。

 

 

やっぱり学校では無理していたのかな

式が終わり教室に戻ってきた生徒たちは、HRが始まるまでの間は写真を撮りあったり、卒業アルバムに一言書いてもらったりと最後の思い出作りに懸命で、この姿はもう何十年も昔に学校を卒業した私や妻の時とあまり変わり映えはしないですね。

そして息子を見ると、サインペンを片手にあちこちの卒業アルバムに何やら書いて回っている。

息子のほうから肩を組んで写真を撮りあったりもしている。

その姿を見ると、2年生から替わった一般入学クラスに溶け込めたのかなと。

学校では無理はしているとしても、こうしてクラスメイト達と卒業を味わうことができている場面を見ると良かったと思う反面、やはり1年生で同じクラスだった推薦入学組の人たちとのこのような姿も見てみたかったとも思いました。

 

私と妻は教室で集合写真を撮っているところを見届けて、教室を後にしました。

帰り際に推薦入学のクラスをチラッと見ると、生徒一人一人が泣きながら3年間の感想を述べている様子が目に入りました。

何もなければ、私の息子も同じようにこの教室で3年間の感想を発表していたのでしょう。

でも息子にはいじめ加害者のAと水泳部顧問のおかげで、悪夢の1年間と何とか立ち直りつつあった我慢の2年間の思い出しかないでしょう。

HRが終わるまで学校にいたらいろいろな思いがこみ上げてきそうだったから、参列した保護者の中では最も早く帰路に就きました。

 

息子の太郎は卒業式からの帰り、何人かで食事をしに行きました。

夜8時ころ帰宅したのですが、いつものように無口でやや疲れた表情をしていました。

そして何を聞いても上の空のようにただ首を縦か横に振るだけ。

いつも誰かと食事に行った日はこんなものだと、あまり気にしていない妻。

でも私は卒業式の日にクラスメイトと食事に行って、これほど不機嫌になるものかなとちょっと不思議に思いました。

 

翌日もまだ何を聞いても口を開くことなく首を縦か横に振るだけ。

「高校ではいろいろあったし、それに受験もあったから何も言わなかったけど、最低限の返事くらいはするべきじゃないか!」

と叱ったあとは、少し話をするようになりました。

 

数日後スマホを持って私のところに来ました。

「クラスの子と食事に行かなあかんからお店の予約をしようと思って、予約サイトに登録しようとしたらブロックされる」

息子のスマホにペアレンタルコントロールで制限をかけていたため、一部のサイトが自動的にブロックされていたのです。

もう高校を卒業した18歳だからペアレンタルコントロールを解除してスマホを渡し、無事に予約サイトの登録ができた。

「食べに行くところを予約しといてとでも言われたの?」

と聞くと

「いっつも僕が予約している、店を探して少しでも安い予約サイトから予約している」

「いつも?」

「うん、全部まかされてる・・・」

結局は押し付けられてもイヤとは言えず、いつも予約をしているようでした。

 

学校ではニコニコしてクラスメイトに接しはしているけど、NOとは言えない性格だから全部引き受けてしまう。

もちろんクラスメイトと時間を共有したい気持ちもあるから、よけいにNOとは言えない。

そして食事の場面でも気を使いながら一緒にいるから、帰宅時は機嫌が悪く疲れた表情をしているのかもしれない。

心の傷に負担をかけながら付き合っているからかもしれません。

そして親に対して偉そうな態度を取っていることは自覚しているけど、心の疲れと学校から帰宅した時の態度もあって素直に口を開けなかったのかもしれません。

卒業式の翌日に叱ったことで、息子から話しかけてくる場面が少しだけ増えつつあります。

 

もう無理はしなくてもいい

 

高校を卒業した息子に対する気持ちは、この一点だけです。

コメント

タイトルとURLをコピーしました