024 子供も保護者もいじめ後遺症と闘い続けるのです

 

スイミングスクールの近くまでは行くのだが

 

学校へ登校できた日を中心に、帰宅後スイミングスクールへも足を運ぼうと何度も何度も挑戦した太郎。

車でスイミングまで送ろうとしたときには、最初のうちは自宅とスイミングスクールの中間地点を過ぎたあたりに達すると、まばたきが激しくなって顔が青白くなってうつむき加減になる。

その後何度もトライして少しずつスイミングスクールまでの距離を詰めていったのですが、やっぱり酷いめまいに襲われる。

一度なんて次の交差点を曲がればスイミングスクールに着く、という場所までたどり着いたけどそのまま引き返したということもありました。

 

また電車でスイミングスクールへ行くときにも私が付いて行ったのですが、あと2駅で着くというところで引き返したり、スイミングの最寄り駅までは行けたけど改札を出ることなく引き返したり。

改札を出て少し歩いたところでめまいによって倒れそうになり、仕方なく断念もしました。

スイミングスクールの入り口まであと50mのところまで歩いて行けたのに、そこからは体が硬直して動けなくなって引き返したこともありました。

ただし太郎は強烈なめまいで倒れそうになったり、顔面蒼白な状態になりながらもスイミングスクールへ歩いて行こうとするのです。

自分から行くことを断念したことは一度もなく、すべて私が無理だと判断して引き返したもの。

そのたびに太郎は大粒の涙を流しました。

 

太郎自身はスイミングスクールには行きたい気持ちがあるようなのですが、いざスイミングスクールが近づいてくると心が抵抗して体が硬直する、こんな状況が何度も何度も続きました。

「昨日よりスイミングスクールに近付くことができたじゃないか、今日はこれで十分だ。よく頑張ったよ。」

私にすればそう言って励ますことしかできない。

 

私の内心では太郎はスイミングへは復帰できないだろう、もう泳ぐこともないだろうと思っていました。

でも太郎の頭の中には何とかスイミングに復帰したいという気持ちがくすぶっているのではないか。

大きな傷を負った心がそれを阻止しようと邪魔するけど、太郎はなんとかスイミングへ近づこうとする。

スイミングスクールのすぐ近くまでやって来れるようになっても、最後の最後に心が大きな抵抗を試みている。

そんな気がしました。

 

ただいじめ発覚前の幻聴の原因は、スイミングスクールでの自分の立場が失われていく情けなさも原因だと思います。

年下で速いスイマーが増え、年上のスイマーは辞めていき、同級生のスイマーは移籍してしまった。

選手コースの中でも男子の年長者となり、なのに自分より速いスイマーがどんどん増えていくことで、太郎自身が情けない思いをしてしまった。

そう思うとスイミングスクールも泳ぎたいから行こうとしていたのではなく、行かなくちゃいけない、サボっちゃいけないという正義感だけで行こうとしていたのかな。

だから余計に心がスイミングスクールへ行こうとするのを阻止していたのかもしれない。

 

 

母親はイライラのピークに

いじめられて傷つき、さらに水泳部顧問によって追い打ちのようにさらにひどいいじめによって深い傷を負ったことは、私も妻も十分理解しています。

それでもいじめられて傷ついた息子に対してイライラしてしまうことがあります。

 

私は今回のいじめ問題について太郎から聞き出す際、いじめの内容や加害者がAであることを聞き出すときだけではなく、水泳部顧問の数々の問題発言などを聞き出すときにも、相当イライラしてしまって太郎をきつく叱責してしまいました。

 

見る人によっては恫喝とか言葉による虐待だと取られても仕方がない状態だと思います。

 

でもその時の太郎の様子、またスイミングスクールへ何とか行こうとするものの行くことができない太郎の歯がゆさを見ていると、イライラするどころかどうすれば解決できるのか、どうすれば太郎に元の笑顔が戻ってくるのかを考えるようになり、イライラすることはかなり減りました。

イライラしそうになるとグッと我慢しています。

妻には太郎の様子を毎日必ず事細かく伝えてはいますが、しかしスイミングへ行けない太郎の心と頭のギャップを、私は妻にうまく伝えきることはできていませんでした。

 

2020年2月26日(水)

この日はマンションの1階で激しいめまいを起こして学校を休みましたが、お昼前にはすっかり元気になっていました。

またこの前日まで何度かスイミングスクールの近くまで行っては引き返すことが続いていたのですが、そんな太郎の様子を見て妻のイライラが一気に頂点に達しました。

学校にも行かない、スイミングにも行かない、なのに昼間はスマホやゲーム機で普通に遊んでいる様子を見てキレてしまったようです。

「もう水泳はしないの?行く気がないの?」

 

太郎は妻の言葉に対して

「うん・・・」

としか返すことができません。

 

「もう水泳をしないのだったらこの家に住み続ける意味がないから引っ越す!」

無言になる太郎に対して妻は

「“うん”で返すのではなくてきちんと言葉で返して!」

この後も妻のイライラから発せられる言葉が続き、返事をすることもなくただ聞き続けるだけの太郎。

妻はこのあと仕事のために家を出たのですが、玄関のドアがパタンと閉まった瞬間に太郎は声を上げて泣き出しました。

 

太郎だって頭では行こうと努力しているんだ。

でも心がストップをかけてしまうんだ。

学校へ行こうとして家を出るけど、強烈なめまいや体の硬直によって動けなくなる様子を間近で見ているじゃないか。

 

少し先の話になりますが

2020年3月12日(木)

太郎はこの日も車でスイミングへ向かったものの、我が家とスイミングの中間地点あたりで涙目になってえずき始めたため引き返しました。

その夜、太郎は兄(太郎より6歳上で療育手帳所持)のちょっとしたちょっかいに対して異常に興奮したように怒りだしました。

太郎が本当に大事にしているぬいぐるみに対するちょっかいだったのですが、そのことに対して本当に珍しく太郎が手を出しました。

これまで太郎が誰かに対して手を挙げたことなんて見たことがありません。

おそらくこれもいじめによって情緒不安定になり、キレやすくなっているためだとは思います。

 

その様子を見ていた妻が太郎をたしなめました。

太郎の顔から見る見るうちに表情が消えていきます、

 

このあと太郎は布団に潜り込んで泣き始めました。

その様子にイライラした妻が

「なに泣いているの?」

「言いたいことがあるんやったら言葉で話して!」

「こっち向いてしゃべれば!」

これらの続けざまの言葉に太郎は尋常ではない泣き方を始めました。

 

そして呼吸が荒くなっていくように感じたので、私は太郎を布団から出して抱き寄せました。

どんどん呼吸が荒くなっていきます。

いじめ加害者のAとその家族が我が家の近くまで来ているとの連絡を受けて以来の過呼吸です。

またこの時は一般的に言われる過呼吸よりも息が激しく、さらに全身が痙攣しているような状態で、異常なほど強い力で私の腕を握りしめてきたので、てんかんなど何か別の病気を発症したのかと思ったほどです。

 

背中をさすりながらゆっくり呼吸するように太郎に言い、少し呼吸が整ってきたところで温かいミルクティを飲ませました。

さすがに妻もかなり慌て、そして太郎に謝罪しました。

このような状況を目の当たりにしないと、元通りに戻らないことに対してイライラしてしまうものなのです。

ただこの一件以降は妻も太郎を冷静に見ることができるようになり、イライラして当たることはなくなりました。

 

 

いじめは登校できれば解決ではない

子供が受けたいじめによる被害って、子供だけではなくその家族にも様々な悪影響を及ぼすものなのです。

いじめによって不登校になった子供がなんとか登校できるようになったから問題は解決!なんてことは絶対にない。

 

いじめ被害者が心に負った傷は簡単に治るものではなく、数年とか数十年という単位でその傷がさまざまな影響を与え続けるのです。

いじめ当時の様々な記憶が蘇っても来るでしょう(フラッシュバック)

同じような場面に遭遇すれば、冷や汗が流れて体がまた硬直するかもしれません。

また太郎の場合だと、ちょっかいを掛けられたり“からかわれ”たりすると、急に怒り出して手を出してしまってから涙を流す、そんな情緒不安定ともいうべき症状がこの先も顔を出し続けます。

 

またいじめられた子を持つ保護者だって

なぜ?

どうして?

という気持ちから子供を激しく叱責してしまうことだってあるのです。

 

朝は学校へ行くのが困難な状況だけど、お昼前になったらスマホをふつうに操作してゲームができる。

なのに夕方スイミングスクールへ行ったかと思うと、朝と同じような状況になって引き返してくる。

子供はサボろうとしているわけではなく、いじめによって心と頭の指令がバラバラになって行きたいのに行けない状況なだけ。

でも保護者にすればやはりサボっているように見えたりする。

それでついきつく当たってしまう。

きつく当たってしまったことを後悔し、今度は保護者の気持ちがふさがってしまう。

 

ようやく登校できるようになったとしても子供の心の傷は全く治っていないし、その様子を保護者は毎日心配しながら見守っている。

私や妻の場合は、今日も10時を回っても学校から電話がなかったから無事に登校したんだな。

と一安心するけど、今度は学校から無事に帰ってくるまでソワソワする。

いつもより帰りが10分遅いだけで心臓がザワザワして落ち着かない。

 

本当にそんな状況なのですよ、いじめに遭った子供とその保護者って。

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