理事長からの電話
2020年2月3日(月)の夜、太郎を見守りながらスイミングスクールから帰るために駅のホームで電車を待っていたら、学校の電話から私の携帯に着信があった。
電話に出てみると水泳部顧問からだった。
切羽詰まったような話し方だったのだが、私には全く何も伝わってこない。
それ以上に、今水泳部顧問は山口県での合宿に参加しているはずなのに、なぜ学校の電話から着信があったのかが不思議だった。
その疑問は翌日判明した。
2020年2月4日(火)
太郎はこの日も妻や水泳部員たちに守られてなんとか登校した。
いつでも学校へ太郎を迎えに行けるように、私か妻のいずれかが常に在宅しているようにしていました。
急に学校から電話がかかってきて、太郎の具合が悪いと言われたときにすぐに迎えに行けるようにです。
私と妻が昼食を取っていたお昼前に家の電話に着信がありました。
ディスプレイを見ると学校からです。
迎えに行かなきゃいけないかなと思いつつ電話に出ると
「わたくし、〇〇高校の理事長をしております○○です。今回の一連の件では太郎君をはじめ皆様に多大なご迷惑をおかけしましたこと、学校を代表してお詫びいたします・・・」
理事長から直接電話がかかってきたのでした。
電話は30分ほど続いたでしょうか。
その会話の中で今回の一件を学校側がどのように考えているのかを聞くことができました。
自己保身のために電話をかけざるを得なかった
太郎が通う高校は中学校も併設していて、中学校と高校にそれぞれ校長が配置されています。
学園長は中・高の両方を束ねた学園のトップで、理事長は学園を経営する学校法人のトップです。
一般の会社に当てはめると理事長はオーナーで、学園長は社長、中高それぞれの校長は部長といった地位になるのかな。
ただ理事長はほぼ毎日学校に詰めているのに対して、学園長は週に一度くらいしか学校へは来れないらしい。
私が理事長に宛てた手紙は2020年1月29日(水)に学校に届き、理事長や校長などはその日のうちに文面を確かめることができた。
しかし学園長はこの後しばらくの間学校へ来ることができず、私からの手紙の内容だけは報告していたという。
そして学園長が学校にやってきたのは、2020年2月3日(月)
そう、水泳部顧問が夜になって切羽詰まったような声で電話をしてきた日です。
理事長によると、私が送付した手紙を学園長が読み相当激怒したらしく、合宿地の山口県から水泳部顧問を急遽呼び戻した。
学校で水泳部顧問から事情聴取を行い進退伺を提出させた。
また学園長はその席で水泳部を廃部にしてもかまわないし、そのような方向に持って行くことを示唆したらしいです。
体育教師とはいえ実際には水泳しかできない水泳部顧問。
なのに学校から水泳部が無くなってしまえば自分の居場所は必然的に無くなる。
この学校での存在価値がゼロになるのですから。
そこで慌てふためいて私の携帯に電話してきたのでしょうね。
水泳部顧問にすれば水泳部さえ存続することができれば、たとえ自分が系列校へ移ったとしても言い訳ができます。
業務命令で系列校へ移ったとか、系列校でも水泳部を立ち上げることになったとか。
いじめ加害者のAを退学処分とさせないための嘆願書を要求してくる作戦から、今度は太郎を何とかして水泳部に残すための作戦にシフトチェンジしたということでしょう。
太郎が水泳部に残るから廃部にはできないだろう
結局水泳部顧問はやっぱり保身しか頭には無いということです。
1月30日の電話ではそれほど切羽詰まった感じはなかったのですが、私が理事長宛に送った手紙程度ではたいして危機感を覚えなかったのでしょう。
ところが学園長から水泳部の廃部や自身の進退伺まで提出させられたことで、さすがに慌てふためいて昨日2月3日に電話をしてきた。
それともう一点
この水泳部顧問は太郎だけではなく、私や妻のことも見くびっていたということですね。
そうでなければ私が理事長に宛てた手紙のあと、もっと慌てふためいて当然なはずです。
私たち家族なんて適当にあしらえると思っていたのでしょう。
私も妻も水泳部顧問の圧力というか気迫に恐れをなしていたことは事実ですし、だから水泳部顧問の要求に従っていじめ加害者を退学させないようにとの嘆願書を書いたわけですから。
この水泳部顧問は自分の筋書き通りに事を運べると信じていたのでしょう。
何せ子供のころから水泳選手としてちやほやされ続け、高校も大学も水泳の特待生としてちやほやされ続け、すべては自分の思い通りになってきたのですから。
いじめ加害者の退学に納得できない保護者の暴走
理事長からの電話によると、同じ日(2月3日)の夕方に学園長がいじめ加害者Aとその保護者を学校に呼び寄せて、退学処分とする旨を言い渡したそうです。
校則でいじめ加害者は退学処分とすることが決められているのですが、この校則を定めたのが他ならぬ学園長だそうです。
中学校も併設しているわけですが、中学校でのいじめについても退学・他校への転校とする方針であるとはっきり述べられているとか。
加害者Aは退学をすんなりと受け入れたようです。
この約一か月間は謹慎だったのか、それとも登校して別の教室にいたのかは分かりません。
でもおそらく退学になるだろうと腹は括っていたのでしょう。
ただしAの父親は退学処分を受け入れることはできないと、相当反論したと言います。
被害者が死んだわけでもないし、うちの子は反省もしているのに退学処分は厳しすぎるだろう!
うちの子が暴力でも振るったというのか!
相手の子はケガを負ったわけでもない!
うちの子の言葉が少しすぎただけだ!
逮捕されるようなことをしたわけではないのに、なぜ退学させられる必要があるのだ!
いくら何でも退学処分は重すぎるだろ!
理事長の話ではAの父親はこのようなことを言ったそうです。
たしかにお前の子供に暴力を振るわれたわけではないよ
でもな
お前の子供の言葉の暴力によって心には大きな傷を負ったんだ
その傷は計り知れないほど大きいんだ
死ぬほうがマシだと思えるほどの大きな傷だ
自殺を図ったけど太郎は死ねなかったけどな
太郎はこれからの人生、その大きくて深い傷を負ったまま生きていくんだよ
太郎は死んでいないのだから退学処分はおかしいだと
暴力を振るったわけでもなく、逮捕されるようなこともしていないから退学処分は重すぎるだと
反省しているから退学処分を撤回しろだと
わかったよ、お前の子供の退学処分撤回の嘆願書を心を込めて書いてやるよ
そのかわりに太郎が負った心の傷をお前がすぐに完治させてみろ!
ちょっと不謹慎と取られるかもしれませんが、私は理事長からの電話を切ったあと本心でこのように思いました。
Aの父親は上記のような言葉を並べ立てて、退学を撤回するように学園長をはじめ理事長や高校校長らに強く迫ったようです。
ただ学園長はいじめ加害者は即刻退学という方針を曲げるつもりは一切なかったようです。
いくら迫っても退学撤回を聞き入れてもらえないAの父親は、会議室内で相当暴れたといいます。
パイプイスなども投げたと理事長は言っていました。
収拾が付かないほど暴れ危険だと感じたために、警察へ電話をして7人もの警察官が事態の収拾に当たったそうです。
まあ親としては、かわいい自分の子供が退学になるという事実を受け入れられなかったのでしょう。
その気持ちも分からなくはありません。
でも
太郎が死んでいないのだから退学処分はおかしいという理屈だけは許すことはできません。
理事長は
「Aの父親は大きな会社で重役か何かをしているようだけど、常識の欠片もない人物だ」
とも言っていました。
これで解決・・・
というわけにはいきませんでした。
常識の欠片もない人物は学校の教師にもいますからね。
嘆願書作戦でいじめ加害者Aをなんとか退学処分からま逃れようとしていたのですが上手くいかず、自身の進退伺まで出さされたことで相当焦っている水泳部顧問は作戦を変更したのですから。
太郎を自主退学から他の高校への編入へと進むように企んでいたのですが、急に水泳部に残れなんて言い出したのですからね。
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