006 水泳部顧問の言葉に怒りを通り越してすべてが空っぽになった

 

水泳部顧問のための謝罪の場

2020年1月10日(金)の続き

 

太郎と私たち夫婦の3人で夕方に高校を訪れました。

実はこの訪れた時間についても不信感が募ることがありまして・・・

 

 

水泳部顧問が我が家から学校へ戻り、学校で対面することの許可を教頭か校長あたりに求めたと思います。

そしてその許可が出たからだと思いますが、水泳部顧問から電話がありました。

「学校でお会いできるようにいたしましたが、何時ごろがよろしいでしょうか?」

 

太郎は熱もあることだし、夕方のできるだけ早い時間帯が良いだろうと思い17時を指定しました。

その1時間後くらいだったと思いますが、ふたたび水泳部顧問から電話があり

「先方がその時間では都合が悪く、早くても17時30分にということなのですが」

 

 

なぜ謝罪を受ける側が謝罪する側に時間を合わせる必要があるのだ?

これだけでも加害者側は本心から詫びたいという気持ちではなく、仕方がなくとか、水泳部顧問からそう言うからって気持ちが伝わってきます。

 

 

私は電話口で怒鳴りつけようと思ったのですが、すぐ隣でぐったりして座り込んでいる太郎を見ると、とてもじゃないですが怒鳴ることなんてできませんでした。

太郎の性格からも、私が電話口で水泳部顧問に怒鳴ればいっそう委縮するのではないか

“自分のせいでお父さんが怒っている”

そう思われることのほうがマイナスだと思い、17時30分に学校を訪れると返事したのです。

 

 

速い水泳選手は偉くてすべてが思い通りになると思っているのだろう

校舎への出入り口にはクラス担任や水泳部顧問が出迎えていました。

応接室へ通されるとAとその家族のほか、校長や学年部長、副部長、生徒指導部長などがすでに席に着いていました。

 

この席上でAやAのお母さんが冒頭に話したことをまとめると

Aはこれまでずっと友達の輪に溶け込むことが苦手で一人でいることが多かった。

同じクラスの水泳部員は県の強化指定選手の合宿などで中学時代から顔を合わせることが多かったものの、Aはそれらの選手とあまり会話することもなかった。

高校に入学してからもクラスで一人ポツンと座っていることが多かったのだが、Aに声をかけたのが太郎だった。

そんな太郎にAはいろいろと話しかけるようになり、やがて太郎はAのむしゃくしゃする気持ちのはけ口へと変わっていった。

太郎ならば許してくれるし、受け止めてくれると思った・・・

 

要約するとこんな感じのことを言っていました。

 

何を言われたところでまだいじめが発覚して数日しか経っておらず、太郎も私たち夫婦も何も感じることなんてできませんでした。

いくら謝られたところで受け入れる態勢にもなっていません。

 

 

“あぁ泣いているなぁ親子そろって、こっちはまだ涙を流す余裕すらないわ”

 

 

って感じですから。

 

水泳指導者の多くは速ければ偉く、遅い奴はカスだという認識を持っています。

遅い奴に応援されるとその遅さが伝染するから応援するな!と言い放つ指導者もいます。

そんな指導者たちのもとで教わった速い選手たちの多くは、速ければ偉いんだと錯覚する。

とにかく自分は速いから偉い、だから何をしても何を言っても許されるし、すべて自分の思い通りになると勘違いする。

錯覚や勘違いしたまま大人になっていく。

 

これは私がAとその家族と水泳部顧問に対して話したものです。

本当はAとその家族、そして水泳部顧問をはじめ学校関係者を罵ろうと思っていたのです。

でも顔面蒼白のままの太郎の横顔を見ていると、とてもじゃないけど太郎の眼前で罵るのはダメだ。

私がAの家族や水泳部顧問を罵ることで太郎はさらに精神的に不安定となるだろうから、あえて遠回しにAや水泳部顧問を非難したのです。

 

「遅い奴に応援されるとその遅さが伝染するから応援するな!と言ったのは〇〇コーチですね、話は聞いたことがあります」

 

水泳部顧問はこう切り返してきましたが、残念ながら自身のことを言われているとは感づいていないようでした。

あなた自身が速い選手は偉いと思い込み、何をしたって許されるし、自分の思い通りになると勘違いしたまま学校を卒業して教師・水泳部顧問になっているのですよ。

 

小さなころはニコニコしていたのに、選手になり全国大会へ出るようになるころには挨拶どころか人を小ばかにしたような顔で見てくるようになる。

男子・女子にかかわらずそんな選手が多いし、そうなるように育て上げていく指導者たちが本当に多いのです。

そしてそんな選手たちがやがてスイミングスクールで選手コースを受け持ったり、体育教師として水泳部を任されたりするのです。

 

 

体や頭の中が空っぽになって感情が抜け落ちていた

Aとその家族との面談は小一時間ほどで終わりました。

泣きながら家族そろって謝罪してきていたようなのですが、ボンヤリとしかその情景を覚えていません。

そのあと私たち夫婦と太郎は隣の部屋へと通され、私たちの前には水泳部顧問やクラス担任が座りました。

 

クラス担任が

「クラス内の出来事ですので学校としては生徒本人と保護者が謝罪するという場を設けさせていただきました。そしてAは基本的に退学という方向へと・・・」

 

と話してるのを遮るように水泳部顧問が

「俺としては水泳部のみんなが揃って卒業してほしい、太郎だってそう思うだろ?もちろんAもいっしょに卒業してもらいたいんだ。ただ太郎だって今後のことがあるし、新しい道に変わって進むことも考えていると思う。」

 

 

いじめ加害者のAは一緒に卒業してもらいたい、太郎は新しい道に変わる?

完全に水泳部顧問の意思が現れていますよね。

いじめ加害者であろうと水泳で良い成績をおさめるAは残ってほしいが、いじめ被害者であろうと別にいなくてもよい太郎は別の道へ進めばいいんじゃないか、という願望ですよね。

 

 

「太郎、Aのお父さんお母さんの顔を見たか?泣いてたやろ?太郎のお父さんお母さんと同じように、Aのお父さんお母さんだってAの将来を心配している。だから許してやってくれ。」

その言葉に続いて水泳部顧問が放った言葉は耳から離れることはありません。

たった一度のことやろ

そして私たち夫婦の方へ向かって

嘆願書をできるだけ早く書いてください!週明けには退学が決まってしまうのでできるだけ早くお願いします。太郎のサポートはしっかりしていきますから!とにかく嘆願書をお願いします!

 

 

Aの父母が泣いているから許せって?

死を決意した太郎に向かってたった一度のこと?

週明けに退学が決まるから嘆願書を書けって?

 

本当ならばここで水泳部顧問を殴りつけるところですよ。

でもこの時の私たち夫婦は、まるで心の中から感情というものがすべて抜け落ちていったような感覚に陥っていました。

もう体の中も頭の中も空っぽ。

水泳部顧問が太郎や私たち夫婦に投げかけてきた鬼畜な

たった一度のことやろ

という言葉は今でもはっきりと覚えているのです。

でもこの時は言ってみれば放心状態に近い感情に包まれていて、鬼畜な言葉を並べられたのに怒りや敵意とか殺意といった感情が何も芽生えてこないほど空っぽになっていました。

 

 

「そうですか・・・太郎、家に帰ろうか」

 

 

そう言って学校を後にしました。

私は頭がボーっとした状態で、ただ疲れたということしか感じませんでした。

学校を出て駅へと向かう途中で、自分で涙を流していることに気がつきはしたのですが。

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