暴風警報で休校
2020年1月8日(水)は暴風警報の発令で学校はお休みでした。
2日前は学校へ行かず警察のお世話にもなるほどの大騒動、昨日は妻と二人で学校へ行っていろいろと言われるもクラスへは入っていけず。
でも夕方からのスイミングには参加した太郎。
本当にタイムが出ないことで悩んだ末の2日前の行動だったら、昨日はスイミングになんて行かないはず。
普通ならば水泳とは少し距離を取るか、完全に辞めるべきところです。
本当に水泳のことで悩んでいたのかを、ちょうど暴風警報でお休みになったのでいろいろと聞いてみようと思いました。
でも太郎の顔を見ると、とてもじゃないけどたずねられる雰囲気ではありません。
私も妻も腫れ物に触る感じでしか接することができませんでした。
目は死んだ魚のようで本当に何日も眠っていない感じがするのだけど、どこか妖気が漂っているようにも感じる。
返事はするのだけどどこか無理して相手している、そんな感じにも思えました。
結局この日は夜まで何も聞くことができず。
「明日は学校へ行けるの?」
とたずねると小さくうなずくだけ。
私も妻も不安を感じました。
太郎は私の横に布団を敷いて眠るのですが、暗闇の中で大きく目を見開いたまま天井をずっと見ていました。
明け方までその状態が続いていました。
また学校へ行かず駅のトイレに隠れていた
2020年1月9日(木)
太郎はやっぱり元気はない。
元気なわけがない。
明け方までずっと目を見開いていたのですから。
「大丈夫なの?無理っぽかったら学校休んでもいいよ」
何度か言ったのですが太郎はそのたびに頭を左右に振り、いつもの時間に家を出ていきました。
ベランダから太郎が駅へ向かって歩いていく様子を見ていたのですが、なんとなくイヤな予感がしてリビングと子供部屋を見たのですが、大事にしているスティッチのぬいぐるみがない。
引き出しに入れていたお年玉などもない。
“まずい!今度は帰ってくる気がないのかもしれない!”
私と妻は走って駅へ向かいました。
改集札機を突破して私は上りホーム、妻は下りホームを見たのですが太郎はいません。
私と妻がホームに着いてしばらくすると上下の電車が到着しました。
太郎が家を出て3分後には駅に走ってきた私と妻。
“太郎は電車には乗っていないはずだ!”
そう思って駅のトイレをのぞいてみました。
個室の一か所だけがカギがかかっていますが、他は開いています。
そのカギのかかった個室から太郎以外の人が出てくれば、太郎は駅には来ていないのかもしれない。
取りあえずその個室から誰かが出てくるまで待ってみることにしました。
太郎はいじめにあっていたことを告白した
駅のトイレの前に20分ほどいたのですが、その間に他の個室は何度も人が入れ替わったのですが、一か所だけは個室から人が出てきません。
妻が交代でやってきてくれたので、私は一旦家に帰ろうと改札を出たところでスマホに着信が
「太郎やっぱりトイレにいた!」
妻からの電話でした。
すぐに駅へ引き返して太郎を確保し、逃げられないように腕をつかんで家に帰ってきました。
「2日前にも大勢の人に迷惑をかけたばかりだろ!まだ分からないのか!」
私はかなりきつく太郎を叱責しました。
でも水泳のタイムが伸びずに悩んでいるだけで登校拒否するのだろうか。
そこが引っ掛かっていたので
「水泳のタイムが原因じゃないね、本当のことを言って!
太郎がしゃべらなきゃ、太郎は今後も同じことを繰り返してしまう。
周りへの迷惑ももちろん防止しなきゃいけないけど、それ以上に太郎のことが心配だから。
まずは太郎の心に引っ掛かっていることを一つずつ取り除こう。
お父さんとお母さんは命を張って太郎を守るから。」
1時間くらいは太郎を説得したでしょうか。
ただ正直なところ、やさしく説得したとは言えないです。
2度も無断欠席して学校関係者に迷惑をかけたのも事実ですから。
やがて太郎がボソボソと話し始めました。
S1の人間がS1じゃない人間に負けるカス
※S1=専門に泳いでいる種目
お前スポーツ推薦?水泳部顧問にお金を渡して無理やり入れてもらったやろ
テストで欠点を取る以上に、S1じゃないやつに負けるほうがおかしい
そういえばお前だけインターハイ出られへんねんな、水泳部のスポーツ推薦はみんな出るのに
このようなことを2019年6月の記録会が終わって以降言われ続けていた。
学校でも、水泳の試合会場でも
約7か月間辛抱して、耐えて、我慢して
心に溜め続けた「いじめ」という毒が満タンになってあふれ出た、それが1月6日だったのでしょう。
ただ誰に言われていたのかはなかなか言わない。
仕返しが怖いのか、太郎が言ったとバレるのが怖いのか
太郎が通う私立高校は、いじめを行った加害生徒は原則退学処分になることが校則で決まっています。
だから自分がばらすことで相手が退学となることを怖がっているようにこの時は思えました。
学校へ行くのが怖かった
誰に言われ続けたのか、複数の人間からなのか、水泳部員みんなから言われ続けたのか。
太郎はなかなか言い出してくれませんでした。
「実際はもっと他にもいろんなことを言われ続けたんやろ?こんなことを言われ続けたら学校へ行かないだけで済まず、自分で自分の命を絶ってしまうこともあるから・・・」
そこまで私が言うと、太郎は涙ぐみながら右腕をそっと突き出してきた。
手首には数本の生々しいキズ痕がある。
「こないだ〇駅のトイレの中で・・・切った・・・死のうと思った・・・」
最初にいなくなった1月6日、太郎は命を絶とうとしていたのでした。
そして太郎は
「A君に言われてた・・・ずっと・・・怖かった・・・学校へ行くのが・・・」
「よく言ってくれたな。辛かったやろ、ずっと溜め込んでいたんやから。」
太郎は泣き崩れました。
やっと何があったのかを話すことができてホッとした部分と、太郎の体におもりのように巻き付いていた圧力を脱ぎ捨てることができた安堵感。
そして
ずっと言わずにおこう、自分の心の奥底に仕舞っておこうという決心が崩れたこと。
いろんなことが重なって泣き崩れたのでしょう。
もしも電車に飛び込んで命を絶っていれば、いったい何があったのかが分からないままだったかもしれない。
手首で良かった、死なずに済んだから・・・不謹慎かもしれないけど心底そう思いました。
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