校長たちが家の近くまでやってきた
2020年2月5日(水)
朝起きてきた太郎の様子が何だかおかしい。
受け答えもままならず。
昨夜A一家が我が家の近くまで来ているということを同級生T君の母経由で聞いた後に、体が硬直し過呼吸の症状が出たのですが、まだその影響が出ているのでしょうか。
無理をして登校させるべきではないと思い、学校を休ませました。
学校へ欠席の電話を入れた際に
「太郎のことに関してですが、こちらから学校へ出向きますので」
と、やんわりと我が家へは極力近付かないでほしいということを伝えました。
A一家からの連絡の前に、夕方に数人の教員が家の近くまで来ていたこともひょっとしたら原因かもしれない、そう思ったからです。
この日は整体院の予約を夕方に入れていたことから、太郎は一人で出かけました。
私が付いて行こうとすると太郎が拒否したからです。
朝は受け答えがまともにできない状態だったのに、夕方になると一人でふつうに外出することもできる。
精神的な病って恐ろしいです。
しかし整体院へ行った太郎は1時間半を超えても帰ってこない。
私の心がザワザワしてしまって、整体院へ太郎を迎えに行きました。
整体院の前に着いた時にちょうど太郎が出てきました。
「肩に鍼をしていて遅くなった」
何も無ければそれでいいのですけど、太郎に関しては心がすぐザワついてしまうようになりました。
2人で家に向かって歩いていると、我が家のすぐ近くで校長や学年部長(学年主任)ら3人が立っていました。
「昨日は断られましたけども、やはりこちらから出向いて謝罪するのが筋なので」
太郎は家に帰らせて、私と校長先生たち3人とで話し合うために近くの喫茶店へ行きました。
水泳部顧問についての客観的な感想
喫茶店へ4人で入り、席に着いたとたんに
「このたびは私どもの対応の不手際やあまりに無礼な行動によって、太郎君やご家族の皆様にご心労をおかけしましたことをお詫びいたします」
3人の男性が私の前に並んで立って喫茶店の中で謝罪されました。
いま謝罪されたところでどうにもならないのですが、学園長から相当厳しく叱責されたのかなと思いました。
「今日も学校を休まれていまして、やはり責任の大きさを痛感いたしまして・・・ご自宅の方へはあまり近付かないようにと伺ってはおりますが、そこはやはり断られようがお許しいただけるまで出向くべきであると、学園長の方からも厳しく言われておりますので・・・」
太郎の現在の様子を考えたとき、今後のことを話し合うのは時期尚早だろう。
先のことを考えるにしても、今の太郎の精神状態では何も決められない。
なので気になったことや疑問点を聞く程度にとどめることに。
「2月3日の夜に水泳部顧問から電話があり、私のことがイヤならば〇〇高校(姉妹校)へ移っても良いと言われていましたが、水泳部顧問の独断でそんなことまで決められるのですか?」
「え?そんなことを言っていましたか・・・」
校長はこう言った後、ゆっくりと首を横に振りました。
そして
「彼なりに必死なのかもしれませんが・・・」
私は
「必死ですか・・・しかし・・・」
と言ったあとに、太郎に1月30日に聞いた水泳部顧問のことを話しました。
「レース前後に水泳部顧問のもとへ行っても、T君にはきちんとしたアドバイスなどがあるが、太郎には『あっそう』『こんど頑張って』など数秒しか話をしなかったり、学校内でも他の部員には返事をするが、太郎が『おはようございます』などと挨拶をしても無視されると言うのです。こういったことが今回の騒動の根本にあるのです」
校長や学年部長が揃って
「太郎君はたしかにいつも我々とすれ違う時には『おはようございます』『こんにちは』とハッキリとした口調で挨拶をしてくれますね。なので聞こえないと言ったこともないはずなのですが・・・」
「たしか水泳部顧問は特待生でこの高校にいて、大学も特待生で入学したのですよね」
と私が尋ねると
「たしかに水泳部顧問はわが校の特待でした」
と校長が答えたので
「結局常にチヤホヤされて体育教師にまでなったので、自分が一番、自分の思い通りにすべてがなる、自分の考えがすべて正しいと思ったまま今に至っているのではないですか。本当の意味での苦労や人間関係の構築の仕方を知らないまま教師になったから、ふつうの人とは明らかに異なるおかしな面が浮き彫りになっていると思うのですが」
と、水泳部顧問について客観的な感想を話してみました。
「彼は彼なりに苦労はしていると思います。ただし言われるとおりで水泳以外では彼を叱る人もいなかったでしょうし、今まですべてが思うがままの状態であったのは確かかもしれません。それに若さからくる経験不足もあるでしょうし」
と校長が言うので
「若さは関係ないですよ。職に就くということはその時点でプロです。経験不足は当然あるにしても、今回の事なんてすべてが勝手な思い上がりだけでことを進めようとしました。独りよがりなだけじゃないですか?」
「たしかに経験不足の面は誰かに補ってもらう必要はあるでしょうし、分からない面は誰かに助けてもらわないとダメだとは言えますね」
こんな話を1時間ほどした帰り際に
「これを水泳部顧問から預かってきました、申し訳ないですが受け取ってください」
と私たち夫婦宛と太郎宛ての2通の手紙を受け取りました。
家に帰ると夕食も取らずに家族が私の帰りを待っていました。
水泳部顧問の謝罪文は読むに堪えないものだった
「けっこう長かったね、何の話をしてたの?」
「ほぼほぼ謝罪ばっかりだった、あとはいじめ加害者のAの話とか」
本当はほぼ水泳部顧問の話だったけど、太郎の前では話さないほうが良いと思ったので私はこう答えました。
「校長が話していたけど、Aの父親は学園長の前でかなり暴れて警察沙汰になったと言っていたよ」
妻も理事長からの電話で知っていた話ですが、太郎には聞かせていません。
もちろん理事長から電話がかかってきたことも話してはいません。
なので今日はじめて校長から聞いたようなふりをして喋りました。
「Aの父親が学園長の前で暴れたって、それは退学処分が決まったからとか?」
と妻は知っているのに同じように知らないふりをして聞いてきたので
「たぶん退学になったんじゃないのかな。その処分に対して気に入らなくて暴れたのかもなぁ」
太郎はかなり神妙な面持ちで私と妻の会話を聞いていました。
太郎がお風呂に入っているときに妻に
「水泳部顧問が親宛と太郎宛ての手紙を書いたらしくて、校長に手渡されたんだ」
と2通の手紙を見せました。
「これ太郎に見せるの?」
そう聞かれた私はもちろん
「太郎には見せないよ。今こんなものを見せたら、太郎は絶対に精神状態がおかしくなるから」
そして妻は
「私も見たくはない。死を選んだ太郎に対して『たった一度の事やろ』と言い放った人間の文章なんて見る気もしない」
そういうので2通の手紙の封を開けることもなく、またカバンにしまい込みました。
未明に目が覚めてしまった私は、カバンにしまった手紙を取り出し一人で目を通しました。
太郎宛ての手紙どころか私たち夫婦宛の手紙にもすべて
「太郎」
と呼び捨てで書かれていました。
水泳に限らず他のスポーツでも、コーチや監督が選手を呼ぶときってほとんどは呼び捨てです。
それも苗字ではなく名前を。
練習中や試合の最中のほか、学校内でもある程度信頼できているのであれば名前を呼び捨てでも別に良いと思うのですよ。
「太郎!」
とコーチや監督が呼び捨てで呼んでいるのを目撃しても、私は別に違和感は感じません。
ただ今回の手紙は謝罪の文章が書かれているハズです。
謝罪の文章の冒頭から
「太郎のことを・・・」
「太郎に対して・・・」
と呼び捨てで書いているのにはさすがに違和感を感じました。
これまでの水泳部顧問やクラス担任からの電話でも、太郎のことを「くん」付けで呼んだことは一度もありません。
学校内で水泳部顧問やクラス担任が太郎のことを呼ぶときに「太郎!」と呼ぶのはまだ許せても、親の前であったり電話口で呼び捨てにするのはふつうの事ではありません。
ましてや今回は謝罪文のハズです。
謝罪文で迷惑をかけた相手のことを呼び捨てで記すというのは、さすがに尋常ではないですよ。
この文章を書いたのが高校の体育の『教師』なのです。
たったそれだけ?
呼び捨ての何がいけないの?
そう思う方もいるかもしれませんが、迷惑をかけた相手のことを呼び捨てで呼ぶ・書くことってあり得ますか?
迷惑を掛けられた相手から呼び捨てで呼ばれて、気持ちが良いわけがありませんよ。
子供なのだから、生徒なのだから という言い訳は通用しません。
体育とはいえ『教師』なのですから、それくらいの常識は持っていて当然です。
逆に言えば、この程度の常識も持ちえない人物が教師として、部活の顧問として全国大会へ生徒を引っ張って行っている怖さを感じました。
スポーツの前に最低限の常識を・・・
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